数日前に、突然38度以上の高熱、悪寒(寒気)、全身倦怠感が来て、何もできなくなった。 幸いイブプロフェンは少し体温を下げる効果はあったが、数時間後には再び高熱になった。 発熱はしたが、初めのうちは咳や咽頭痛はなく、下痢も腹痛もなかったので、いったいどこが悪いのか分からなかった。

一番不思議だったのは、発熱後すぐに飲み始めた買い溜めしておいたシプロフロキサシンが全く効かなかったこと。

二日目の夕方、排尿時に少し尿道痛があることに気づいた。 それで、尿路感染症(といっても尿道炎じゃなくて前立腺炎か膀胱炎か腎盂炎)かもしれないと思った。

シプロフロキサシンを三日間飲んでも全く回復しなかった。

どうしたものかと考えていたら、数年前に似たようなことがあったことを思い出した。

それで、このブログの過去記事を検索してみたら記録されていた。

薬局で、「高熱が出て、おしっこの際に少し痛く、シプロフロキサシンや アモキシシリンが全く効かない」と伝えたら、Siam Metrolex (メトロニダゾール)400mg という薬を出された。 

薬剤師は、「これは女性の膣炎に使われる薬で、男性にはあまり効かないかも。」 

と言ったが、それが劇的に効いたのだった。

メトロニダゾールとは

  • トリコモナス症、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫(ジアルジア)などの原虫感染症。
  • 嫌気性菌(酸素を嫌う細菌)による各種感染症(歯科領域の感染症、腹腔内感染症、骨盤内感染症など)。
  • 胃のヘリコバクター・ピロリ菌除菌(他剤と併用)。

に効くという不思議な抗生剤。 腟トリコモナス症の第一選択薬。 トリコモナスは男性が感染しても、軽度の症状のみで高熱が出ることはない。

数年前、シプロフロキサシンが効かなかったのに、この薬が劇的に効いたことから、将来似た症状が出た時のために400mgを100錠近く買い貯めしていたのだった。

今回、さっそくそれを飲んでみた。 朝、7時に飲んで10時には発熱は消えて、体のだるさは治まった。夕方には治ってしまったかのような劇的な効果だった。

トリコモナス症だったとは考えにくいので、どうやら嫌気性菌による感染症だったようだ。

メトロニダゾールが前立腺炎のような尿路感染症に使われることは滅多にないので、貴重な経験だ。

タイでは、シプロフロキサシンや アモキシシリンが多用されるので、耐性菌の問題がある。僕の場合も、耐性菌の可能性はゼロではないが、メトロニダゾール単独で急速に改善することは説明しにくい。

なんだか良く分からないが、マシュマロちゃんの肺感染症で入院した際に僕が原因菌について尋ねたとき、担当医師はこう言った。

「原因菌なんて分からないわ(調べてもいない)。良くなってきたならそれでいいのよ。」

現場レベルでは正解と思った。 現在の僕も同じ。なぜメトロニダゾールが効いたのか知らないが、効いてくれたので、それでいいのだ。 

ちなみに、メトロニダゾールが原虫であるトリコモナスに効く理由がとても変だ。

トリコモナスには、シプロフロキサシンのターゲットであるDNAジャイレースは存在しない。トリコモナス原虫は通常のミトコンドリアを持たず、代わりにヒドロゲノソームという特殊な細胞小器官でエネルギーを作っていて、それがメトロニダゾールに電子を渡すことで、ニトロ基(–NO₂)が還元され、非常に反応性の高い「ニトロラジカル」に変化し、それがDNAを破壊するからだそうだ。

変な薬だが、お酒が飲むのが禁忌な他は有難い薬だ。