今母が一人暮らしする家に家族で引っ越して来たのは、今から約55年前、僕が小学校3年生の時だった。

あの頃は、家の周りには田んぼと茶畑と小さな林しかなかった。

逢妻川と言う小さな川を挟んで、田んぼが広がっていた。

当時、僕の家の周りには数軒の家が有っただけなのに、今ではかつての田んぼに家が建ち並び、茶畑や林も完全に消えてしまった。

田んぼも川の両側にところどころ残っているだけで、当時使っていた道は脇道になって、新しく作られた道が主な道路として使われている。

大学入学以降、この家に住むことは無くなったので、ざっくり言って、45年以上ずっと故郷から離れていた事になる。

だから、家の近くでもカーナビがないと迷子になってしまう。

記憶の中の風景と全然違うので、もうここは僕の故郷ではなくなった気がする。

そんな故郷だが、一つだけもう一度行ってみたい所があった。

それは、僕の初恋の彼女の家。15歳の頃の話。僕の初めての女だった。

その近くの川の橋の下で、いつもいちゃついていた。

今日、密かにそこに行ってみたら、そのあたりだけ昔のままの様相を得していた。

この橋の下でいちゃついていたいたら、仕事帰りで橋を通っって声を聞きつけた彼女の母さんが、心配そうにやって来た。近所の工場で働く、未だ若くて綺麗なお母さんだった。

母子家庭で、二人の子供を育てていた。計算すると、当時35際くらいだったと思う。今のマシュマロちゃんとそう変わらない。

そのお母さんは、今では85歳かそれ以上のおばあちゃんで、未だ生きているのかどうか知らない。

時は流れて、あの時の彼女が、あの時のお母さんを通り過ぎて、おばあちゃんになったということ。(あの時の少年が、ジジイになったということ。)

初恋の彼女は、その後悪い男と結婚し、酷い目に合わされて離婚。その後、今度は働き者の良い男と再婚して、幸せに暮らしている。

どうして、そんなことを知っているのかと言うと、今から20年前、別れてから30年後、一度再会デートをして話せたから。犬山方面のフラワーパークだったと思う。

僕が15歳、彼女が未だ14歳の時、僕の家、つまり今母が独り暮らしするこの家に来て、僕は初めて女のあそこにキスした。

それから息子を入れようと頑張ったが、入り口が狭過ぎて上手く入れることが出来なかった。

なので、この助平野郎に処女を奪われずに済んだ彼女だが、再開した時に彼女が言ったことは、

「あのあと家に帰る時、お股が痛くて痛くて自転車に乗れずに、ずっと家まで自転車を引いて帰ったのよ。血も少し出ていたし。 だから、あの時が私の初体験だったと、ずっと今でも思ってるわ。」

橋の下の堤防に生えていたこの花は、今では排除すべき外来種として忌み嫌われているが、ひょっとすると50年前に僕が蒔いた種の子孫かも知れない。

きっと、もう此処に来ることはない。

千葉の家も元妻の居場所になった。

僕の故郷は、マシュマロちゃんと七海ちゃんとの楽しい思い出に満ちた、タイのカオヤイになるんだろう。