僕は今、チェンマイの北にあるメーリンという街にいる。

マシュマロちゃんの親戚に不幸があったから、昨日の朝、急遽9時間車を飛ばして来た。

その不幸は、既に起こってしまったことで、僕らが駆けつけても何も事態を変えることは出来ないので、「駆けつけても仕方がない」と思うのは冷淡な日本人である僕が考える事であるが、タイ人は何も出来なくても駆けつけて悲しみを共感することを重んじる。

モン語が分からない僕が行ってもぼっとしているだけだが、僕も駆け付けて来てくれた人として親族に認められたかったし、マシュマロちゃんと共に過ごす良い機会になると思ってやって来た。

その不幸とは、マシュマロちゃんの義理の兄弟の長女が気管閉塞から脳死状態に陥ってしまったこと。

義理の兄弟と言うのは、マシュマロちゃんのお父さんが二人の妻を持っていて、マシュマロちゃんのお母さんとは別の妻の子供であると言う意味。

タイでは今でも一夫多妻は存在する。法的には認められないが、習慣として昔からある。

特にモン族では今でも普通。

タイ人ですら、お金持ちは例外なく愛人を囲っていて、子供がいることも珍しくない。

イサーン地方の田舎では複数の妻との家族が同居していることもある。

話は反れるが、浮気が罪という観念は、人類史上僅か100年かそこらから始まったことで、養育力があれば一夫多妻は最近まで認められてきた。

話を戻すと、義理の兄弟の子供(23歳未婚女性、マシュマロちゃんの姪にあたる)が、約一年前にパラセタモール(アセトアミノフェンのこと)を一瓶全部飲んで自殺しようとした。

しかし、パラセタモールをいくら飲んでも死ねるわけじゃないので、計画的じゃない自殺行為だったと想像する。何故死にたいと思ったのかは知らない。

飲んだ薬が喉に詰まって呼吸が上手く出来なくなり、病院で薬を取り除こうとしても薬が喉にくっついて取れなかったので、喉を切開して取り除いた。

その後、その姪は元気になって、今年4月の僕らの結婚披露宴にも来て七海ちゃんを可愛がってくれた。

しかし、喉には気管孔チューブが付いていて、言葉は話せなかった。

その彼女が、今月何らかの理由(コロナかインフルの咳かも)で気管孔チューブが取れてしまって、病院に行って気管チューブを取り付けようとしても上手く刺さらなかった。そのうち、気管が閉塞して全く呼吸が出来なくなり、数分後に心停止。

心臓マッサージ等の救急処置をするも、無呼吸状態が20分程続いて、脳死状態になってしまったらしい。

メーリンのより大きい病院に運ばれ、ICUで人工呼吸をしたが、心臓が動き出したが、医師の話では既に回復不能な脳死状態とされた。

僕がICUに行って彼女を見たとき、心臓は動いていて、血中酸素飽和度も高かったが、脳死状態では心停止も時間の問題らしい。

彼女の両親は、この現状を理解していたが、親類達は、体温も有り心臓が動いている状況を見て「既に死んでいる 」とは思えず、未だ人工呼吸機を付けたままだ。

病院も、もう脳死だからと即座に人工呼吸機を外すことは出来ないようだ。

AIに聞いてみたが、突然気管閉塞で呼吸が全く出来なくなると、僅か数分で意識不明となり7分位で心停止に至る。その状態が15分続いたら完全に脳死状態に至るらしい。

実に呆気ないものだ。脳は無酸素状態では数分しか持たないとのこと。

それにしても、しっくり来ないのは、

人の死と脳死は同じではないらしい。

では、心臓の停止と人の死は同じなのか。

心臓より脳の方が重要に思うが。