数日前からアップンの財布の中は50バーツしかなくなり、ママというインスタントラーメンもなくなり、一昨日、昨日とアップンは何も食べられなかった。50Bは電話代のために、どうしてもとっておかないといけない。アップンの田舎では、お金がなくても誰かが食べ物をくれるのでご飯が食べられないということはないので、おそらくは彼女の人生ではじめての経験だったことだろう。
父親の治療費のために家にお金を送るためと、僕から借りたお金を返すために、朝7時から夜10時まで、連日工場で14時間労働をしている。しかも、立ちっぱなしだ。いくら若くても、ご飯なしでそんなことができるわけがなく、アップンは遂に立てなくなってしまった。
可愛いアップンがご飯も食べられないと聞けば、日本人男子(もしくはエロ親父)として放っておくわけにも行かず、昨日アップンに600Bを電送した。こういう話は、優しい日本人からお金を巻き上げるために、友人や家族ぐるみで上手いこと演じられる場合が多いのだが、アップンについては昔から知っていることもあって、その手の騙しではなさそうだ。(万一、騙されているのだとしたら、結構毛だらけ猫灰だらけだ。)
昨夜はカオ・パット(タイ風焼き飯)を食べたと嬉しそうに電話してきた。
25日の給料を貰ったら、アップンは今の仕事を辞めて、別の仕事を探すかもしれない。コールセンターのはずが工場になり、8時間のはずが14時間になって、面白くない。僕も仕事を変えることを勧めている。アップンはトラディショナル・ダンスが得意なので、それで食べていくのが一番と以前から思っていた。
チャオプラヤー川沿いには、有名な一流ホテルがたくさんあって、そのうちのその名もRiverside Hotelで、連日タイのトラディショナル・ダンスのディナーショーが行われているらしいが、そのダンシング・チームにアップンの友人がいて、そのボスにアップンの写真を見せたところ、ボスからOKが出たらしい。井上陽水がRiverside Hotelという歌をヒットさせていて、僕もカラオケでよく歌うのだが、多分そのRiverside Hotelだ。
そのホテルじゃなくても、観光客に見せるタイのトラディショナル・ダンス・チームはきっとたくさんあって、1日4−5時間労働だし、誰でもできるわけじゃないから、月給も高い。上手く行けば客からのチップも入る。Riverside Hotelの場合は、20000Bかららしい(こういう数字は、鵜呑みにはできないが、一定の参考にはなる)。
先日電話でアップンは、「タイ語の勉強に行っている間、私はあなたの部屋でTVを見て待っていてもいい?」と言ったような気がする。
冗談なのか本気なの分からないが、25日に月給を貰ったら、アップンはこの部屋に転がりこんで来るような予感がする。そのまま居座られても困るが、ダンスチームの口が決まるまでなら、置いてあげてもいいかなと思っている。


