朝9時から夜の8時迄、彼女はチェンマイの自動車運転免許試験場に居た。

夜の8時半になって、汗だくの彼女からビデオコールがあった。

「私、試験にパスしなかった。」

やっぱりと思ったが、一応驚いて見せた。

「どうして落ちたんだ? 悪かったのは実技それとも筆記?」

「車をクルワイにぶつけちゃったから。」

クルワイというのはバナナのことではない。 道路に置くプラスチック製の赤くて円錐形のあれだ。(日本語でなんと言うんだっけ?)

試験は自分のピックアップで受けたという。カローラかシティー借りて受けるのかと思っていた。ピックアップは小回りが効かず図体もデカイので車庫入れ等は難しかっただろうに。

「試験は落ちちゃったけど、最後には免許証貰ったわよ!」

試験に落ちるも免許証を貰えたのには、勿論訳がある。

1週間ほど前、ノンタブリで試験の予約をしようとした時、試験日が変更されていて予約できるのは一週間後となり、チェンマイに帰ってしまう日になってしまった。困った彼女が兄さんと相談すると、

「あのね。お兄さんが教えてくれたんだけど、試験は落ちても、どんな場合も三回目には免許証貰えるんだって。」

「ほう、なるほど。それはかなり合理的なシステムだな。」

「それにね、チェンマイじゃ2500バーツで免許証買えるんだって!」

ふむふむ、タイなら有りそうな話だ。

「だから、私チェンマイで2500払うことにする。」

僕も試験には簡単には受からないだろうと思っていたが、彼女自身もそう感じていたようだ。 三回分の試験費用と時間を考えれば、初めから2500でケリをつけた方がいいかも知れない。

「車の運転自体は簡単なので、数ヶ月で誰でも上手に出来るようになるから心配ない。だけど、道路標識や法律は知ってないといけないことだから、ちゃんと勉強して試験受けた方がいいんじゃない?」とだけ言っておいたのだった。

彼女はちゃんと試験を受けて不合格になった。

しかし、2500が働いて、夜には免許証が発行されたという訳だ。

立派な法治国家の日本では考えらないような話だが、日本のような国の方が実は珍しいのではないかと思うこの頃。