今週の月曜日、警察や政府機関の内部に詳しい人からの調査報告を聞いたとき、僕は我が耳を疑った。セカンドライフの破局を感じ、めまいに襲われた。

僕は会社を閉じ、タイを出国、もう二度とタイには来れないかもしれなかった。

僕の起業の夢は終焉し、マシュマロちゃんとのいちご園も彼女との生活も全て終わり。また一人罪のない女を不幸にしてしまうところだった。

「でも、もう大丈夫。問題は全部クリアーしたから。」 とその人は言った。

「全部クリアーとは、どういう意味ですか?」

「二つの大きな問題があったけど、何もなかったことにしました。」

僕は意味がわからず、ブログの読者は更にわからないだろうが、細かい話は危険なので置いておくことにして、ともかくも初めから問題がなかったことにしてくれたという。

そもそも、僕の身に降りかかった問題自体が僕が事前に感知し得なかったことで、本来的に僕が重大な罪を犯したわけではないのだが、政府機関の3つの部署にまたがる今回の「事件」を、「初めからなかったことに」出来るところは全くもってタイらしいところだ。

法律よりもお金を優先する汚職の文化は、タイが近代国家になるのを妨げる最大の問題だと思うが、時にはそれによって助かることもある。

もともと僕から金を巻き上げてやろうという動機から始まった可能性が高かったと思うが、動機が金なら金で解決できる可能性も高いと言えるかもしれない。

しかしながら、誰でも政府の内部情報の操作ができるわけではなく、内部に強力なコネがある極めて限られた人の助けがなくては到底無理なことだ。

経理その他を頼んでいる会社からも、「もう、こうなっては私たちにはどうすることも出来ない。」と言われていたのだが、たまたま、本当に偶然的に友人の伝手でそういう人に巡り会えたのは、とてもとてもラッキーだった。


もとより、タイで仕事をする外国人は大変リスキーな状態に置かれている。

タイで仕事をする以上、タイの法律を順守しなければならないのは言うまでもないが、時には100%の順守は簡単でないこともある。

バンコクでバーを経営する僕の知り合いは、度々お役人の訪問があり、その度ごとに4万バーツほどカツアゲされているという。カツアゲというのは言葉が悪いかもしれないが、そのお金はもちろん国庫に入るのはなく、ポケットに入るお金だ。まだ軌道に載っていないお店の場合、4万バーツの臨時出費があると、もう経営自体がままならなくなる。あるいは少なくとも、自分の取り分がその分減ることになるだろう。

ノンタブリで会社を長く経営していた日本人は、タイ人に3000万バーツ持ち逃げされ、やむなく会社閉鎖に追い込まれたそうだ。3000万バーツは巨額なので、会社閉鎖だけで済んだのかどうか分からない。

僕の会社も、金額は小さいものの、過去数10回に渡って横領されていたことが去年発覚した。小銭を取られるだけならいいが、払うべきお金が払うべきところに行かなかったことによる損害は計り知れない。


月曜日の夜、僕はパスポート、ワークパーミット、銀行の通帳、クレジットカード、現金、社印、それから会社の登記書等の重要文書を全部持って、この事務所を後にした。

問題は全部クリアーにしたと言われても、言われてからまだ数時間しか経っておらず、いつ事態が急変するか分かったものではない。ここに戻れなくなるかもしれないので、万が一のためのリスクヘッジだ。マシュマロちゃんには僕のパスポートのコピーを持たせた。

僕は、不安な気持ちのままマシュマロちゃんといちご園に向かった。翌朝はサメット島へのいちご園終了慰労兼親孝行旅行に旅立つためだった。天空の村から家族が来ていたし、宿も全額払込済みで、今更予定変更も出来なかったのだが、万が一の場合に行方が眩ませるちょうどよいタイミングでもあった。

その夜は一睡もできず、朝4時に起き上がって、5時にサメット島に向けて出発したのだった。

前日の報告を聞いてから、まだ一日も経っていなかったが、こうしてビーチへ向けて旅に出られるのが、とてもありがたかった。