二日前、彼女の親戚の若者が釣りをして、25センチ大のプラニン(ティラピア)を7匹も差し入れてくれた。

そこで、その日は日本男児の僕が魚を捌き、しょうゆ味の魚鍋を披露することになった。

しかし、そこで切れない包丁と蚊の襲撃で酷い目にあった。

 

夕暮れ時の寝泊まり小屋の周りは蚊が凄い。

焚き火の煙で蚊を追っ払うのだが、炊事をするところは少し離れているので、焚き火の効果がない。特に、地上20センチまでの低い位置がいけない。煙は届かず、蚊がたかっている。

両手は魚と包丁で塞がっていて、蚊を追い払えない。中腰での捌きは足を動かせず、足首から下が無防備状態となった。

7匹もの魚の鱗とはらわたを取っているとき、たくさんの蚊が僕の足から血を吸っているのがわかった。痒くて死にそうなのに、どうすることもできなかった。

料理の方は、まずまず美味しくできたのだが、床についてから足首が浮腫んだように腫れ上がった。全体が痒くて、どこに刺されたのかわからない。

蚊に刺されたときの水ぶくれが、足首全体にできたような感じだ。

そこで取り出したのが、日本からこの日のためにわざわざ持参した「ムヒ」。

虫刺されといえばムヒと相場は決まっている。

あれには麻酔薬が入っている。ムヒをたっぷり塗ったら痒みは止まって眠れた。

ああいういいものが蚊の多いタイにないのはなぜだろう?

 

しかし、悲しいかなムヒの効果は長くは続かない。今朝もたっぶりつけて出かけたものの、お昼にはもう痒くて我慢ができなくなった。

見てみると、足首だけで無数の刺され痕が見えた。

NewImage

赤っぽいプツプツが全部蚊に刺された痕。100箇所以上あるのでは。まだ少しむくんでいる。

足首のあたりは血管が近いので蚊に刺されやすい場所だが、刺されると異常に痒い場所でもある。

 

これだけ刺されると、病気が心配になってくる。タイで気をつけないといけないのは、デング熱とマラリアとフィラリア。

ノンタブリの市場のあたりでも、先日象皮病の人を見かけた。

NewImageNewImage

顔にも出来るが、手足にもよくできる。

NewImageNewImage

不思議なことに陰嚢や乳房にできやすい。

NewImageNewImage

手塚治虫のブラックジャックにも出てくる、この見るも悲しい病気は、フィラリアが原因。

犬の心臓につくフィラリアじゃなくて、バンクロフト糸状虫というヒトのリンパ管・リンパ節に寄生するフィラリアで、これがリンパ管に詰まってリンパ液が滞留すると上記のような症状になる。

この病気、日本にも昔はよく見られたらしく、陰茎が巨大化して歩けなくなる地獄絵などを見たことがある。あの西郷隆盛は犬に金たまを食いちぎられたのじゃなくて、象皮病で陰嚢が人の頭大に腫れ上がって悩んでいたらしい。

バンコクでは象皮病の患者がBTSの階段付近で物乞いもしくは寄付集めをしているのを見かける程度だが、タイの地方ではまだ象皮病患者はいる。

 

 

ただこれ、特効薬がある。

若い頃、僕は会社の命令で北里研究所にいたことがあるが、最近ノーベル賞をもらった大村智先生がとなりの研究所で分離した放線菌からメルク社がイベルメクチンという薬を開発して、失明するオンコセルカ症や犬のフィラリア、象皮病が治るようになったわけだ。北里研究所にもメルク本社にも、オンコセルカ症で失明したアフリカの人たちの銅像がある。

そんなわけで、ちょっと縁がある象皮病だが、タイで蚊に刺されて象皮病にはなりたくない。