多分同じ歳くらいのとなりのおばちゃん。歳の割に、しまった身体付きをしている。ポニーテールが本当に可愛い。
最近、度々お菓子やバナナを持ってきてくれる。スバリ食べきれない。
いつもノックもせずに勝手に部屋に入ってくる。プーがこのところ来る回数が減ってきたが、代わりに隣のおばちゃんが来るようになった。そして、部屋の奥にあるシリコン製のマネキンのおっぱいを揉んで帰ってゆく。
この前はエロビデオを見ながらチャックを下げている時に入ってきたので焦った。息子は無事しまったが、チャックまでは上げる時間がなかった。
「クルワイ(バナナ)持ってきたよ。それと、これはお米のお菓子。中国正月だからあげる。アレ?今日は若い娘はいないの?」
「今日はいない。明日卒業式なんで、家族が来てるからホテルに泊まっている。」
「あら、寂しいわね。」
隣なので、話さなくても何もかも筒抜け。トムが他の男をセントラルで待たせて、知らぬ顔でここに来ていたことも知っていた。
前にも書いたが、そのおばちゃんに随分お世話になった。
今度の展示会のブース作り、とある商品のパンフレット作り、下着のモデル、別の商品のチラシ作りは、すべて彼女にオーガナイズしてもらった。
多分、経費の一部を吸い取られていると思うが、それはビジネスなので当然のこと。メリットとしては、何しろ隣なので連絡等非常に楽だ。業者のサービスが悪いときも文句を言いやすい。チラシ1000部で注文しても、おまけで1400部持ってきてくれるといった嬉しいサービスもある。
パンフレット作りでは、僕は日本人らしく、微妙な色合いや画像の滲み、フォントのズレに拘ってクレームをたくさん出した。
「こんなのタイ人は気にしないわよ。」と彼女は言うが、僕としては絶対譲れない。
「とにかく指定したとおりにやってくれ。これでは駄目だ。細かいところは、デザイナーなんだから、そちらのセンスでベターなものを提案して来い!」と何度も突き放した。
そのうちに、実際のデザーナーと直接話をさせないとダメだと分かったらしく、プロマネ一人じゃなくてデザイナーを連れてくるようになった。それでも、こちらの意図が伝わらないので、
「パソコンとイラストレーターファイルもしくはインデザインのファイルを持ってこい。その場で一緒に直す。」と僕は一歩も譲らなかった。そうして、なんとかとりあえず許せるものが期限ギリギリで出来上がった。デザインの様に感覚的なことを母国語以外で伝えるのは至難の業というか、ほとんど無理。双方、非常に疲れた。
となりのおばちゃんは半分呆れて、「あなた、前にデザインか美術関係の仕事やってたの?」と聞くが、僕はバイオテクノロジーはやってきたが、デザインなんてからっきしダメだ。だけど良い悪いは別として、自分の感性にしっくり来ないものは、どうしても受け入れられなかった。
となりのおばちゃんは、かなり歴史のある経済ものの小さな新聞社の社長で、その関係でいろんな業種に顔が広い。特に、印刷やデザイン関係は得意だ。なぜかプリティのリストも山ほど持っている。
「今度、取材してただで私の新聞の一面全面に載せてあげるわね。」なんて言うが、
「僕のことなんか記事にならないと思うけどね。とにかく、女のことは書いちゃダメだよ。」
ただのとなりのおばちゃんだったはずなのに、人の巡り合わせって面白い。


